副業を始めてから一定の収入が確保できるようになると、開業するかを考える方も多いかと思います。
そこで開業届を税務署に出さなくても、個人事業主やフリーランスとして仕事をすることはできます。
私も今は個人事業主として仕事をしていますが、開業届は税務署まで行ってしっかり提出してきました。
「開業届は出さなくてもいいんじゃ…」と感じている方もいますよね。
そこで今回は、開業届のメリット・デメリットを中心に、提出するタイミングや書類の作成方法も合わせて解説していきます。
ちなみに、開業届は驚くほど簡単に作成できることと、数分で書類提出も完了するので開業自体は誰でもできますよ。
開業届を出すことのメリット
開業届を出すことで得られるメリットは主に以下の内容になります。
- 青色申告による特別控除が受けられる
- 副業でも事業所得にできる場合がある
- 屋号を利用して事業用の銀行口座を作れる
- 小規模企業共済の退職金制度を利用できる
- 事業者としてのモチベーションが高まる
それぞれわかりやすく解説していきますね。
メリット①:青色申告による特別控除が受けられる
開業届を提出しなくても「白色申告」で確定申告を行うことができます。
ですが、税務署に開業届と「所得税の青色申告承認申請書」を出すと、10万円または65万円までの特別控除がある「青色申告」ができるようになります。
青色申告は確定申告のときに「貸借対照表」「損益計算書」も提出することになります。
また、「事業所得」として申告できることが条件でもあります。
例えば個人事業主には38万円の基礎控除がありますが、青色申告によって「38万円+65万円=103万円」まで年間所得から控除できるということですね。
青色申告による税制優遇を受けるためには、「複式簿記」による知識が多少必要になりますが、所得税と住民税が安くなるので大きなメリットです。
複式簿記はハードルが高いイメージがありますが、クラウド型の会計ソフト「会計freee」などを利用すれば、知識がなくても手軽に作成することが可能ですよ。
メリット②:副業でも事業所得にできる場合がある
本業を辞めて自分の事業1本でこれから生活するなら、開業届を税務署に出せば比較的容易に事業所得として認められます。
事業所得には青色申告ができることや、「純損失の3年間繰り越し」「給与所得等の損益通算」など、お得になる制度が利用できるメリットがあります。
継続的に続けている仕事で、本格的に経費や労力を費やしていて、社会一般が事業として認識できるか、ということがポイントになります。
本業の傍ら、片手間のお小遣い稼ぎ程度で得ている収入だと、「雑所得」として判断されます。
本業を上回る収入を継続的に得られる副業で、精神的・肉体的にも本気で取り組んでいる内容なら、税務署が事業所得として認めてくれる可能性もあります。
ただ、本業の給与所得だけで生活できるレベルだと、基本的には「雑所得」に区分されることが多いかもしれません。
メリット③:屋号を利用して事業用の銀行口座を作れる
開業届を出していれば、自分が決めた屋号で銀行口座を開設することもできます。
屋号は自分の会社名のようなものですが、個人口座と事業口座を明確に分けることで資金管理しやすくなり、確定申告もスムーズに行うことができます。
事業規模が小さいうちは、プライベートと混合していてもそこまで問題はありませんが、いずれ大きく成長したときには事業口座も必要ですね。
また、個人名で資金を振り込むよりも、会社名で振り込みを行った方が事業としての実感もありますよね。
事業口座は誰でも簡単に開設できるものではありませんが、今後は事業用の銀行口座を持ちたいと考えている方は、開業届を提出しておきましょう。
メリット④:小規模企業共済の退職金制度を利用できる
個人事業主やフリーランス向けに、自分の身を守る手段として「小規模企業共済」があります。
毎月7,000円~7万円までの500円単位で積み立てることができ、掛け金は「全額所得控除」されるメリットがあります。
20年以上加入していると、掛け金に対して100%以上の解約手当金を受け取ることが可能です。
小規模企業共済に加入するには「開業届の控え」または「確定申告書の控え」が必要になります。
小規模企業共済で積み立てた掛け金は、基本的に「一時金」方式で受け取ることができ、退職所得として控除されるので節税効果もあります。
毎年の節税効果を高めつつ、将来的に事業を廃業または引退したときの資金を確保できる制度なので、個人事業主やフリーランスの方には嬉しいメリットですね。
メリット⑤:事業者としてのモチベーションが高まる
これから独立して自分の事業だけで生活するときに、事業内容によってはあまり実感がなかったりします。
私の場合であればブログ運営による開業だったので、「特別な証」のようなものがなくてイマイチ専業になった感覚がなかったですね。
ですが、税務署という正式な場で開業届を出すことによって、「これでついに個人事業主になったのか!」という強い意志が芽生えたんです。
これは精神的な面があるので個人差があるかもしれませんが、新たなスタートラインに立って前進する大きな人生のターニングポイント。
ここをしっかり実感することで、高いモチベーションを持って事業に取り組めるんじゃないかと思います。
だからこそ、「開業届を出す」という行動はとても重要だと感じますね。
開業届を出すことのデメリット
開業届は基本的に提出するものなので、デメリットを考えることは少し違うようにも感じますが、一応以下のような注意点があります。
- 失業保険が受け取れなくなる可能性がある
- 確定申告をしないと税務署から注意される場合あり
こちらもそれぞれ解説しておきますね。
デメリット①:失業保険が受け取れなくなる可能性がある
開業届を税務署に提出するということは、新しく事業を始めていると判断できるので、失業状態ではないことから失業保険は受け取れない可能性があります。
会社の倒産や契約期間の満期などによる離職、自己の意思による退職によって失業した場合、再就職を不安なく行うために支給されるもの。
簡単に説明すると、失業中の一定期間は生活に必要なお金を支給してくれる制度です。
失業保険は再就職に向けた支援金のようなものですね。
失業中かつ再就職に向けた活動をしていないと失業保険は受け取れません。
開業届を出すということは、すでに事業を開始していて再就職する必要がないと判断できるので、失業保険は受け取れなくなると考えておきましょう。
デメリット②:確定申告をしないと税務署から注意される場合あり
確定申告は基本的に、
- 専業の場合:年間38万円以上
- 副業の場合:年間20万円以上
これだけの所得(収入ー経費)があると、確定申告をしないといけません。
開業届を税務署に提出している以上は、「事業者であることを証明」しているわけですから、確定申告していないと税務署から連絡がくる可能性がありますね。
もし税金の支払い義務があるにも関わらず、確定申告をしていない場合は「脱税」となって重い罰則を受けることに…
なので、開業届を提出しているかは関係なく、確定申告が必要な所得を得ている方は確実に申告するようにしましょう。
副業でも開業届を出す必要はある?
本業でサラリーマンや会社員をしながら、副業を続けている方もたくさんいますよね。
そこで年間所得が20万円以上になりそうだから、開業届を提出しようか考えている方も多いでしょう。
先にご紹介したように事業所得として認めてもらえれば、青色申告による税制優遇に加えて、給与所得と損益通算できるメリットがあります。
ですが、副業収入の規模や継続性、費用や労力のかけ方などの判断によって、事業所得とは認められない可能性があります。
本業による安定収入を得ながら副業も続けていく場合は、開業届を出しても「雑所得」として申告することになるかもしれません。
また、開業届を一度提出してしまうと失業保険が受けられない可能性もあるので、副業のみで生活できるレベルでないなら開業届を出すかは検討しましょう。
開業届を出すと会社にバレるリスクはない?
開業届は原則として「マイナンバー」を記載して提出します。
この情報が会社にバレてしまうんじゃ…と心配されている方もいますよね。
ですが、あくまでも税務署に提出するものなので、開業届を出したからといって会社にその情報が伝わるようなことはありません。
会社にバレてしまう問題点としては、住民税の増減になりますね。
住民税の納付は給与から天引きされる「特別徴収」なので、本業+副業の収入が記載された税額が会社に通知されることが原因です。
ですが、これは確定申告時に副業収入を「自分で納付(普通徴収)」にすることで、バレるリスクを減らすことができます。
ただ、仮に副業収入が事業所得で申告できた場合、給与所得と損益通算することができるので、副業の赤字を相殺すると全体的な住民税が安くなります。
本業の収入額が同じなのに税額が安くなるのは不自然ですし、これによって「給与以外の収入があるのでは…」とバレてしまう可能性がありますね。
なので、副業禁止の会社で働いている方は十分注意しておきましょう。
開業届を税務署に提出するタイミングは?
開業届を提出するタイミングは特に気にする必要はなく、いつでも好きな時期に税務署へ行って出すといいですね。
というのも、開業届には「開業日」を記載する項目がありますが、自分の好きな日に決めることができます。
例えば、「1月1日にフリーランスとして始めよう!」と思えば、その日を開業日にすればOKです。
実際に事業を始めたのはもっと前だとしても、特に思い入れのある日でなければ好きに決めるといいですね。
なので、開業届を税務署に提出するのは自分のタイミングで問題ありません。
青色申告する場合は提出するタイミングに注意
税制優遇の高い青色申告をするためには、「所得税の青色申告承認申請書」も税務署に提出することになります。
この青色申告用の書類は提出するタイミングによって、次年度まで青色申告ができない場合があります。
2018年度分の所得は、2019年2月18日~3月15日までに確定申告を行います。
ここで青色申告するためには、2018年3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出している必要があります。
例えば、2018年12月時点から提出しても、2018年度分の所得に関しては青色申告ではなく、白色申告するしかないということですね。
ただし、新規開業なら「開業日から2ヶ月以内」に提出すれば、2018年度分から青色申告することができます。
「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」は、開業日に合わせて2枚セットで税務署に提出するのがいいかと思いますよ。
開業届・青色申告承認申請書は無料作成できる【簡単5分】
「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」はどうやって作成するのか、まったくわからない方も多いかと思います。
この2種類の書類は税務署に行ってもらうか、国税庁のホームページからダウンロードできます。
ただ、書類が手に入っても書き方がわからないので、自分で作成しようと思うと結構な手間なんです…
そこでもっと簡単に作成するために、開業に必要な書類を一括作成できる「開業freee」を活用しました。
- 開業に必要は書類は無料ですべて作成できる
- 簡単な質問に回答するだけで自動作成
- 提出先の税務署も地図で確認できる
- 郵送の場合も必要情報を用意してくれる
開業freeeで自動作成した後は、プリンターで印刷してマイナンバー記入とハンコを押したら完成です。
ほんとに驚くほど手軽に作成できます。
ここまで簡単に書類が作れるとは思っていませんでした。笑
これから開業に必要な書類を作成される方は、無料の開業freeeを活用されてみて下さい。
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開業届を提出したら確定申告をするための準備をしよう
開業届を提出したら、来年の2月18日~3月15日までに確定申告を行う準備が必要です。
とはいえ、いきなり自分の力で確定申告を行うのは難しいですよね…
税理士に頼むのが一番手っ取り早いんですが、右も左もわからないうちから依頼するのもハードルが高いです。
そこで多くの個人事業主やフリーランスの方が利用しているのが「会計ソフト」です。
会計ソフトはクレジットカードや銀行口座と連携して自動入力できたり、申告書の作成をサポートしてくれるので、記帳の手間と時間を削減することができます。
会計ソフトは早めに導入した方がいい
とりあえず、確定申告の時期になってから会計ソフトを使おう…と考える方もいるんじゃないかと思います。
ですが、開業した時点から会計ソフトは使用しておくのが望ましいです。
会計ソフトがあればクレジットカード情報などを自動取得できますが、クレジットカードの取引履歴は数ヶ月分しか残らない場合もあります。
また、一度にまとめて処理するにしても、過去にさかのぼって何の支払いかを確認するのは相当な手間…
会計ソフトは記帳の手間を削減できるとはいえ、使い方には慣れておくに越したことはありませんし、余裕をもって早めに導入しておきましょう。
初心者向きなおすすめ会計ソフト
今までに簿記の知識や経験がまったくない方は、個人的にクラウド型の「会計ソフトfreee」がおすすめです。
- 青色・白色申告書を含む様々な書類出力が可能
- 口座連携で勘定科目を自動推測してくれる
- レシート・領収書を自動解析して入力できる
- Windows・Macで電子申告ができる
- メール・チャットサポートが利用可能
会計ソフトfreeeは、初心者でも直感的に使えるようデザインされていて、効率良く使えるように考えられています。
会計ソフトは有料プランで利用するのが基本ですが、機能制限付きで「無料プラン」も用意されています。
無料プランでは確定申告書類を印刷できませんが、取引データの自動取得・管理やメール・チャットサポートなど、一通りの機能は使用できますね。
オプションを利用すると、電話サポートも受けることが可能です。
また、freee公認の税理士を無料で紹介してくれるサービスもありますよ。
まずは会計ソフトfreeeがどんなものか、実際に体験してみることをおすすめします。
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開業届のメリット・デメリットまとめ
- 青色申告による特別控除が受けられる
- 副業でも事業所得にできる場合がある
- 屋号を利用して事業用の銀行口座を作れる
- 小規模企業共済の退職金制度を利用できる
- 事業者としてのモチベーションが高まる
- 失業保険が受け取れなくなる可能性がある
- 確定申告をしないと税務署から注意される場合あり
開業届を税務署に提出することで青色申告による節税効果があったり、将来を考えた退職金制度を利用できたりするメリットがあります。
とはいえ、これから本業と副業を並行してやっていこうと思っているなら、事業所得にできない可能性があるので注意が必要…
開業届は提出する義務はありますが罰則はないので、副業の所得が少ないうちは特に意識する必要はないかもしれません。
開業届のメリットが得られるのは、生活できる水準を維持できる安定した副業収入や、今後は個人事業主やフリーランスとして起業する意思のある段階の人です。
事業を始めるなら、青色申告の特別控除だけでも大きな魅力。
開業届と合わせて、「所得税の青色申告承認申請書」もしっかり提出しておきましょう。
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