フリーランス・個人事業主の方は、会社員やサラリーマンとは違って税金の支払いを自分で行うことになります。
売上計算や経費などの会計業務も大変ですし、税金の負担も想像以上に大きくなります。
ですが、税金対策をしっかり行って確定申告をすれば、支払うべき税金を安くすることは可能です。
フリーランス1年目の方は節税に関して知らないことも多いので、早めに勉強しておくことでムダな支払いをなくすことができますよ。
そこで今回は、フリーランス・個人事業主が知っておきたい節税対策をご紹介します。
税金対策①:青色申告の特別控除を利用する
確定申告をする場合は「白色申告」または「青色申告」で税務署に提出することになります。
現在では白色・青色申告ともに帳簿が必須なので、白色申告をするメリットはありません。
青色申告で提出する場合は、10万円または65万円の特別控除を受けることができます。
控除額が大きい65万円の青色申告特別控除は、日々の取引を「複式簿記」で記帳する必要があるので、ハードルが高いと感じてしまうところ…
ですが、「会計ソフトfreee」などのクラウド会計ソフトを活用すれば、自動で帳簿付けできるので問題なく青色申告できます。
会計ソフトは基本的に有料サービスですが無料から利用できますし、料金はすべて経費にできるのでムダにはなりません。
申請には事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要
青色申告で申請を出すためには、青色申告承認申請書を以下の期限日までに税務署へ提出しておく必要があります。
- その年の3月15日まで
- 業務を開始した日から2ヶ月以内
ちなみに私の場合は「開業届」と一緒に書類を提出しました。
書類の記入漏れ等がなければ数分で受理されます。
開業届・青色申告承認申請書の作成方法がわからない…という方は、「開業freee」を利用するとサクッと必要書類が作成できますよ。
税金対策②:家族経営なら青色申告の専従者控除を利用する
事業経営を奥さん・旦那さん、その他の親族と共に行っている方もいますよね。
その場合は青色専従者として給与を支払うことで、必要経費として支払ったお金をすべて控除することが可能です。
これは青色申告者が受けられる「青色事業専従者給与」という制度ですが、以下の条件を満たしている方が専従者の対象です。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
- その年を通じて6ヶ月以上、事業に従事していること。
青色専従者への給与額は自分で設定することができるため、節税効果はかなり大きくなりやすいですね。
ただし、月10万円以上に設定する場合は税務署から業務内容のチェックが入る可能性も…
業務に見合わない給与額だと認められない場合もあるので、適性と判断できる給与額に設定するのがいいですね。
【注意】青色専従者は「配偶者控除」の対象外になる…
納税者本人の合計所得が1,000万円未満であれば、配偶者控除を受けることができます。
配偶者控除は一般的に38万円ですが、青色専従者として給与を支払う場合は配偶者控除が受けられません。
なので、青色事業専従者給与で税金対策を行うなら、配偶者控除よりも多くなるよう設定しましょう。
税金対策③:消耗品費や交通費などの経費漏れに注意する
ここは税金対策というよりは、経費計上を上手く行って課税所得を抑える方法になります。
フリーランス・個人事業主の中には自宅を仕事場としている方もいますが、経費として計上できる種類は結構あります。
- 水道光熱費:水道・電気・ガス代など
- 家賃:事業使用割合分
- 消耗品費:文房具・家具など
- 旅費交通費:電車・バス・タクシー、宿泊代など
- 通信費:電話・ネット・サーバー代など
- 広告宣伝費:新聞やテレビなどの宣伝
- 交際費:喫茶店・カフェなどの飲食代
- 損害保険料:火災・自動車保険料など
※自宅が仕事場の場合は「家事按分」する必要があります。
「家事按分」とは、プライベート費用なのか事業用として使用した費用なのかを分けることです。
主に電気料金や家賃、インターネット料金やスマホ代などが家事按分する項目ですね。
消耗品は事業で使用するボールぺンやコピー紙、プリンターインクなどのほか、椅子やデスクなどの家具も経費になります。
ただ、10万円を超えるモノは消耗品ではなく「固定資産(備品)」となります。
10万円以上30万円未満の資産は、青色申告ならその年に「全額経費」として計上できます。
カフェやファミレスの飲食代も経費にできる!?
自宅が仕事場のフリーランス・個人事業主の方は、気分を変える目的でカフェやファミレス、喫茶店などを利用して仕事をする場合もありますよね。
実はそのときの飲食代も「雑費」として経費に計上することができます。
特に私のようなブロガーであれば、ネット環境がある場所ならどこでも仕事ができるので、自宅近くにカフェ等があれば活用したいところですね。
また、取引先の人や仕事の関係者と打ち合わせで利用する場合でも、「交際費」として飲食代を計上できます。
もちろん遠方で電車・バスなどを利用する場合は交通費になりますし、そのままホテルなどに泊まる場合は宿泊費になります。
経費に計上するなら基本的に領収書をもらって保管しますが、電車・バス代などは「出金伝票」や「交通費精算書」が代わりになります。
税金対策④:iDeCo(イデコ)の所得控除を利用する
「iDeCo(イデコ)」とは、老後資金に備えた資産運用ができる個人型確定拠出年金という制度です。
毎月5,000円から積み立てすることが可能で、以下のような税制メリットがあります。
- 掛け金は全額所得控除になる
- 運用で得た利益は非課税になる
- 受取時は一定額まで非課税になる
このように税金対策に効果的な資産運用になりますね。
iDeCo(イデコ)は20歳~60歳まで積み立てることができ、フリーランス・個人事業主は月68,000円まで掛けられます。
例えば、年収500万円の方が月68,000円を40年間積み立てした場合、約980万円(年間約24.5万円)の節税効果が見込めます。
フリーランス・個人事業主は公的の「国民年金のみ」なので、老後の備えとして私的のiDeCo(イデコ)でも積み立てする人は増えていますね。
税金対策としても非常に効果が大きいですから、早めにスタートさせておくほど税制メリットを最大限に活かせます。
【注意】iDeCo(イデコ)は60歳まで引き出せない…
iDeCo(イデコ)は税金対策としてとても魅力的ではありますが、原則60歳以降にならないと引き出すことができません。
積み立てによって将来受け取れるとはいえ、手元の資金は目減りすることになります。
個人事業では急なトラブルでお金が必要になることもありますし、いつでも引き出せないのは不安要素でしょう。
また、iDeCo(イデコ)は年1回しか掛け金の変更ができないため、事業が安定してくるまでは少額から始めた方がいいですね。
もし積み立てすることが厳しくなったときは「停止」または「再開」できるので、無理に積み立てを続ける必要もありません。
ただ、iDeCo(イデコ)に積み立てできるのは60歳までなので、その辺も含めて運用を始めるか検討しましょう。
税金対策⑤:小規模企業共済の所得控除を利用する
「小規模企業共済」とは、積み立てた掛け金は全額所得控除される退職金制度です。
こちらもiDeCo(イデコ)と同様に節税効果が大きいですね。
月1,000円~70,000円の範囲で積み立てすることが可能で、増額または減額もできます。
小規模企業共済の納付方法は、「月払い」以外に「半年払い」「年払い」も選択できますよ。
また、iDeCo(イデコ)とは違って「途中解約」することも可能。
受け取る共済金および解約手当金は、一括で受け取るか65歳以上で任意解約すると「退職所得」になるため、税負担が大きく軽減されます。
【注意1】20年以内に任意解約すると元本割れする…
小規模企業共済は任意解約できますが、掛け金の積み立て期間が240ヶ月(20年)未満だと、掛け金合計額を下回り元本割れします。
これが最大のデメリットと言えますね。
ただし、これは個人事業をやめずに共済だけ解約する場合に限られます。
例えば、個人事業主を廃業して会社員などに戻る場合は、20年未満であっても掛け金の100%を「共済金」として受け取れます。
共済金は掛け金を「6ヶ月以上」納付していれば受け取ることが可能ですよ。
廃業ではなく任意解約する場合は、最低でも20年以上は積み立てを続ける必要があると理解しておくといいですね。
【注意2】掛け金を減額すると減額分は運用されない…
小規模企業共済の掛け金は一定の利率で運用されますが、途中で減額した場合は減額分の運用がストップします。
例えば、3万円で運用していたときに1万円へ減額すると、2万円分の掛け金に関しては運用されず、それ以降は金利も付かなくなります。
20年未満の解約かつ減額してしまうと、元本割れする金額はさらに大きくなってしまうため、小規模企業共済への積み立ては注意が必要ですね。
とはいえ、元本割れすると言っても所得控除額の方が大きくなるので、フリーランス・個人事業主の方は加入しておくのがおすすめです。
小規模企業共済は事業規模によっては加入できなくなるため、小規模のうちに少額から無理のない範囲で続けていくのがいいかと思いますよ。
- 参考:中小機構 小規模企業共済
税金対策⑥:国民健康保険組合に加入で保険料を安くする
フリーランス・個人事業主になると、一般的に「国民健康保険」へ加入することになります。
国民健康保険は前年の課税所得に応じて納税額が決まるため、所得が増えればそれだけ税負担も大きくなります。
会社員やサラリーマンのように企業側が半分負担してくれませんし、保険料がかなり高くて四苦八苦している方も多いですね。
そこで保険料を安くするための方法として「国民健康保険組合」があります。
国民健康保険組合とは、同種同業の自営業者などで組織・運営されているものです。
設立されている組合は全国で164ありますが、フリーランスの方は「文芸美術国民健康保険組合」へ加入できる場合があります。
- 参考:文芸美術国民健康保険組合
文芸美術国民健康保険組合に加入した組合員は、収入の多い少ないに関係なく均等の保険料になっています。
- 組合員1人あたり:月額19,600円
- 家族1人あたり:月額10,300円
※介護保険料は1人あたり月額4,000円です。
年収300万円~400万円を超えてくるようなら、国民健康保険よりも安くなる感じですね。
どちらに加入するべきかは、この辺を目安に判断されるのがいいでしょう。
文芸美術国民健康保険組合には誰でも加入できる?
文芸美術国民健康保険組合は、文芸、美術及び著作活動に従事していることが条件となっています。
つまり、イラストレーター・ライター・WEBデザイナーなどの職業が対象です。
収入のメインがデザイン料や執筆料など、制作したものが売上となっていることが必須ですね。
私の場合であればブロガーとして主に広告収入を得ているため、文芸美術国民健康保険組合への加入はできません。
もしブロガーでも加入したい方は、デザイン系の仕事をメインに活動する必要があります。
国民健康保険組合へ加入できると保険料は安くなりますが、誰でも加入できるわけではないので注意しましょう。
税金対策⑦:国民年金のまとめ払いで所得控除を増やす
フリーランス・個人事業主は国民年金を20歳~60歳までの40年間、毎年支払うことになります。
2019年6月現在で月額16,410円なので、年間にすると約19.7万円の納税を行うことになりますね。
国民年金で支払ったお金は所得控除の対象ですから、確定申告を行うことで所得税・住民税が安くなります。
この国民年金には「6ヶ月」「1年」「2年」のまとめ払いにも対応しています。
そこで1年分ではなく2年分をまとめて納税することで、所得控除額を増やすことが可能です。
ただ、この方法はあくまでも「税金の先送り」でしかないので、一時的に所得が大きくなる時期に活用すると効果的ですね。
【お得】口座振替で支払うと納税額が安くなる
国民年金では以下のような割引制度も用意されています。
- 口座振替 早割:月額50円(年間600円)割引
- 口座振替 前納:最大15,760円割引
- 現金払い 前納:最大14,520円割引
「口座振替 前納」の場合は、2年分を前納すると納付額が15,760円割引されます。
年金はいずれ支払うものですから、口座振替のまとめ払いにした方がお得ですね。
フリーランス・個人事業主の方は覚えておきましょう。
税金対策⑧:ふるさと納税の寄付金控除を利用する
「ふるさと納税」とは、応援したい地方自治体に寄付ができる制度のことです。
この制度の大きな特徴は、所得税や住民税の還付・控除が受けられる「寄付金控除」があることですね。
ふるさと納税を利用して先に税金を納めておくことで、その年の税負担を軽減できるのが魅力です。
また、多くの自治体では地域の名産品(返礼品)などが特典として受け取れることもあり、税金対策のほかにも嬉しいメリットがありますよ。
お肉・お米・果物などの食品関係からティッシュ・タオルなどの日用品、旅行の宿泊券やイベントのチケットなど、貰える特典は豊富にあります。
ふるさと納税は税金対策の中でも手軽にできるため、節税をするならおすすめの方法ですね。
【注意】ふるさと納税では2,000円が実質負担に…
ふるさと納税は、自治体に寄付した金額から2,000円を差し引いた額が控除の対象になっています。
例えば42,000円を寄付した場合は、確定申告で40,000円が所得税から控除(還付)、住民税から控除(減額)されます。
なので、2,000円相当もしくは2,000円相当以上の名産品(返礼品)が貰えるとさらにお得です。
ふるさと納税の返礼品として人気が高いのは「Amazonギフト券」コードの還元ですね。
ふるさと納税サイトはいくつかありますが、Amazonギフト券コードの還元があるのは「ふるなび」になります。
使い道にも困らないのでおすすめですよ。
税金対策⑨:経営セーフティ共済で必要経費を増やす
「経営セーフティ共済」とは、取引先が倒産したときに連鎖的な倒産・経営難に陥ることを防ぐための制度です。
中小企業倒産防止共済制度とも言いますね。
掛け金は月5,000円~20万円まで自由に選択でき、増額・減額もできます。
経営セーフティ共済の掛け金に関しては、フリーランス・個人事業主なら「必要経費」にできるため、節税効果にもかなり期待できます。
ただ、積み立てることが可能な上限額は800万円までです。
共済契約は自己都合で解約することもでき、12ヶ月以上の積み立てなら掛け金総額の8割以上、40ヶ月以上なら掛け金全額が戻ってきます。
小規模企業共済では20年間積み立てしないと掛け金の100%は戻ってきませんが、経営セーフティ共済は40ヶ月以上と比較的早いです。
長期的に運用を続けることが不安な方は、こちらの方が向いていると言えますね。
【注意】解約手当金は「雑所得」として全額課税対象…
小規模企業共済の受取時は「退職所得」扱いにできますが、経営セーフティ共済では「雑所得」として全額課税されることになります。
退職所得の場合は「退職所得控除」と「1/2課税」で税負担が大きく軽減されます。
ですが、雑所得の場合は税制面の優遇がありません。
経営セーフティ共済は部分的に解約を行うこともできないため、掛け金全額が一括で戻ってくることになります。
なので場合によっては、節税目的で加入したけど解約時に売上増加で税負担が増えてしまった…というケースも考えられます。
経営セーフティ共済はあくまで「税金の先延ばし」になるので、この点を踏まえて上手く戦略を立てておくことが大切ですね。
税金対策⑩:法人化して給与所得控除を利用する
フリーランス・個人事業主は法人化することで「給与所得控除」が受けられるようになります。
法人化して自らが社長となって役員報酬を給与として支払うことで、支払った給与を所得から控除できるというメリットがあります。
つまり、給与額を大きく設定すれば課税所得を減らすことができるわけですね。
一定以上の所得があれば法人化した方がお得
フリーランス・個人事業主は、累進課税制度が採用された「所得税」を支払うことになります。
この所得税は課税所得に応じて、5%~45%まで税負担が大きくなります。
ですが、法人化すると所得税ではなく「法人税」の支払いになり、以下のように税率が設定されています。
課税される所得金額 | 税率 |
~800万円以下 | 19% |
800万円超 | 23.2% |
※2019年6月現在の税率になります。
所得税の場合は695万円を超えると23%の税率になるので、法人化した方が安くなりますね。
900万円を超えると税率33%の所得税がかかるため、法人の方が約10%も税金が安いです。
一般的にはよく1,000万円を超えると法人化した方が良いと言われていますが、税負担を考慮しつつ、収入の安定性も加味して検討するのがいいですね。
【注意】役員報酬を支給するなら社会保険の加入が必須
国民健康保険と国民年金に加入しているフリーランス・個人事業主の方がほとんどだと思います。
ですが、法人化して役員報酬を支払うなら「社会保険」へ加入しないといけません。
これは社長1人であっても同様に加入義務があります。
従業員の人数が多くなるほど社会保険の負担額も大きくなってしまうため、今後従業員を雇う予定の方は注意が必要ですね。
法人化しない場合は、従業員5人未満までなら社会保険への加入は任意です。
社長1人で事業を継続するなら気にならないことですが、従業員を雇う場合は法人化するか慎重に判断することをおすすめします。
なお、会社を設立したい方は「会社設立 freee」を利用するのがおすすめです。
簡単に必要書類を作成できるだけでなく、設立にかかる費用も抑えられるので便利です。
誰でも無料で使えますし、ガイドに沿って入力を進めるだけなので、会社設立の際は活用されてみて下さいね。
フリーランス(個人事業主)ができる税金対策まとめ
税金対策をしないのと対策するのとでは、実際に手元に残るお金が大きく違ってきます。
せっかく事業が好調で所得が増えても、税金で持っていかれてしまっては勿体ないですよね。
だからこそ、フリーランス・個人事業主の方は節税を意識することが重要になります。
税金の負担を上手く軽減できれば、その分のお金を自分の事業へ投資することもできますし、効率よく事業拡大を進めることが可能です。
税金対策は知らないと本当に損をすることになります。
これから稼いだお金は税金でムダにしないために、できる範囲で節税を行っていきましょう!
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